研究概要 |
特殊養護老人ホームに代表される介護施設などで,介護スタッフと共同しながら高齢者を見守り,必要最小限のサポートで転倒事故を未然防止するペット動物型身体サポートロボットの実現を目指し,転倒の事前検出を目標とした身体動作解析システムの構築と転倒時の衝撃軽減に関する要素技術について研究した.本年度は,多くの試験とその解析を行うことで,看護介護現場に適用する実用デバイスを構築することを主たる内容に定めた.そのためダミー人形や人体(成人男子)に,ジャイロ,加速度センサ,分布足圧測定システム,筋電計測システム,参考データとして心拍計測機など各種センサを装着して多方面からの計測を行い,特に転倒の事前検出を目標とした身体動作解析システムの構築を行った.数多くの転倒実験を行った結果,特にジャイロセンサから有用なデータが検出された.具体的には,歩き始め時で角速度が20[deg/s]と小さい値に収まっているのに対し,転倒初期段階から角速度が顕著に増加し,転倒時には230[deg/s]という本ジャイロセンサの最大計測値を記録した.体幹の角速度が転倒の判断指標になりえるほどの違いが出たかについて,昨年度の高フレームレート・イメージセンサモジュールなどを使い,主に体の動きに着目して今回の結果を解析した.人は歩行中も転倒中も足首やつま先周りの回転運動を行っている.この回転運動を上手く打ち消しながら動作している場合は安定状態であり打ち消せていない場合が転倒動作であるといえる.転倒時には,足部の回転動作を上半身で打ち消せておらず,上半身部の角速度は大きな値になっていたことが判明した.高信頼と高安全が求められる臨床使用を想定すると,転倒開始直前直後の検出や転倒以外の動作による誤判定をしないためには,高フレームレート・イメージセンサモジュールとジャイロによるセンサフュージョンが必要となると考えている.以上のことから,各速度を検出する能力を有する高フレームレート・イメージセンサモジュール及びジャイロセンサが,特に看護介護支援時で重要となる転倒事故防止を実現する人共存ロボット用高機能デバイスとして有効である事が分かった.
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