研究概要 |
本研究は変形性股関節症患者の股関節外転筋群の筋の質的トレーニングとして固有受容器性神経筋促通手技(Proprioceptive neuromuscular facilitation:以下PNF)の有効性について表面筋電図(以下EMG)解析及ぴ,三次元動作解析装置を用いて検討したものである.本年度は研究最終年度であり,データ解析及,成果発表,そして論文作成に向けた情報収集を中心におこなった.本研究の結果としては,PNFエクササイズ後では,ROHで患側6方向,健側3方向,最大随意筋力計測では患側6方向,健側4方向で有意な増大を認めた.また,片脚立位時では大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋における%IEMGの有意な増大と3次元動作解析における総軌跡長の有意な減少を認めた.歩行時の%IEMGにおいては大殿筋,中殿筋共に立脚相で有意な増大を,遊脚相で有意な減少を認め,3次元動作解析では患側立脚相における総軌跡長の減少傾向を認めた.上記の結果から,PNFでは全ての運動方向において有意な可動域の増大を認めている事から,PNFによるエクササイズは股関節周囲筋群の柔軟性を改善させ股関節周囲の2関節筋群による股関節固定の改善,予防として有用なエクササイズとなり得る事が示唆された.以上,本研究の総括として,筋の質的機能向上には,(1)多関節運動に回旋運動が加えられること,及び(2)足底から加えられる抵抗方向(擬似的床反力)が極めて重要であることが分かった.即ち,筋の質的機能向上には,抵抗(負荷量)の大きさではなく,回旋運動と低抗方向のバランスが重要である.本研究課題は平成19年度の基盤研究Cの採択を受け,継続発展させて進めていく予定である.
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