研究概要 |
本研究の目的は,体育授業と学級経営の関係を明らかにすることであった.東北および関東圏内の公立小学校3〜6年生964名を対象として,体育授業態度評価と学級集団意識調査票を用いて,年間を通して両者の関係がどのように推移するかを調査分析した. 分析の結果,子どもの体育授業態度評価と学級集団意識の間には有意な正の相関関係が認められ,この関係は年間を通じて持続する傾向にあることが確かめられた.また体育授業を中核に学級経営を展開している教師のクラスを対象にした参与観察から,教師が体育授業を中核にしてどのような学級経営を展開しているのかについての具体的事実を把握することができた. また研究主題に関連する研究として,学級集団を肯定的にすることをめざした体育授業実践,体育授業中に生じる「もめごと」についての分析,教師と子どもの意識の「ズレ」についての調査研究も行った. これらの研究から,(1)子どもたちの仲間関係を肯定的にすることを意図した教材を適用し,それに応じた教師の相互作用を行うことによって,子どもたちの仲間意識が肯定的に変容するという事実,(2)体育授業中,ルールや役割に関して生じる「もめごと」は,当人同士の話し合いや仲間・教師の介入によってその場で多くが解決するけれども,情意や人間関係に起因する「もめごと」は,その場で解決することが少ないということ,(3)1学期よりも2学期の方が,教師と子どもの意識の「ズレ」が大きくなる傾向があること,さらに担任の教職経験年数が長い方が「ズレ」が大きくなっていたことなどが明らかになった. これらの研究により,体育授業と学級経営の関係の具体像を確かめることができ,同時に,体育授業を中核によりよい学級経営を展開するために求められる要件の一端についても明らかにすることができた.
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