研究課題
若手研究(B)
本研究では、筋収縮およびインスリンによる糖代謝への影響にExtracellular signal-regulated kinase(ERK)が果たす役割について遺伝子改変マウスを用いて検討を行った。ERK2のホモ欠損マウスは胎生致死であるため、実験にはERK2ヘテロ欠損マウスを用いた。我々はこれまでにERK2ヘテロ欠損マウスは、野生型マウスに比して、高脂肪食摂取による体重の増加が大きく、耐糖能試験の成績が悪くなることを認めている。本年度は、ERK2が遺伝子発現に及ぼす影響を検討するためDNA chipによる網羅的解析を行った。その結果、糖代謝と関連が予想されるいくつかの遺伝子の発現に影響が認められた。なかでも、肝臓におけるインスリン様成長因子I(IGF-I)の発現は、野生型マウスに比してERK2ヘテロ欠損マウスで高値を示した。さらに、ERK2が恒常的に活性化されるERK2sem型遺伝子改変マウスを用いて、同様な網羅的解析を行った。ERK2sem型マウスは周産期致死のため胎生15.5日齢で胎児を採取し、総RNAを調製した。DNA chipによる解析の結果、ERK2sem型マウスは、同腹の野生型マウスに比して、インスリン受容体遺伝子の発現が高値を示した。また、インスリン様成長因子(IGF)に結合し、その作用を抑制するIGF結合タンパク質1(IGFBP-1)の発現は、ERK2sem型マウスで高値を示した。これらの結果は、各個体の総RNAをもとに行ったReal-time PCR法によっても再現され、統計的に有意であった。以上の結果より、ERK遺伝子の欠損による機能低下および恒常的活性化による機能亢進は糖代謝に関連するタンパク質の遺伝子発現に影響を及ぼす可能性が示唆された。
すべて 2005 2004
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