本研究は、水泳中の筋電図分析および水中映像分析を実施することにより、水泳選手のパフォーマンスの変化要因が身体能力および泳技術とどのように関連しているのかを明らかにすることを目的としている。 予備実験では、昨年度に残された2点の課題を解決することを目指して取り組んだ。1点目は、筋電図の記録中に不定期に記録されたノイズを除去することであった。昨年度は、マルチモニタレコーダからPCへのデータ転送には無線を用いたが今年度は有線で行った。その結果、ノイズは記録されず正確に筋電図を記録できることが確認された。2点目は、水中映像とEMGの同期についてであった。今年度は、小型集音マイクを用いて同期を試みたものの、それも困難であることが確認されたため、昨年度と同様に被験者の被験筋側の手が入水する度に手動でトリガーを入れて対応した。この点については、今後、解決していきたい。 本実験では、昨年度と同様に200mレースのシミュレーションとして、最大努力での50m×4回のスピード泳テスト(休憩時間は50m毎に10秒)を実施した。その後、各被験者のデータを観察し、分析可能なデータのみを用いて1ストロークサイクルあたりのiEMGを求めた。その結果、上腕二頭筋と上腕三頭筋について、第1スプリットと第2から第4スプリットの間に5%水準で有意な差が認められた。そこで、1ストロークサイクル中の筋放電パターンを確認したところ、上腕三頭筋は、入水からストローク中盤にかけて、上腕二頭筋はストローク中盤から終盤にかけて第1スプリットの筋放電が高いことが確認された。第1スプリットの泳速度が最高値を示したことより、高い泳速度を獲得するためには上腕二頭筋および上腕三頭筋が果たす役割が大きいことが推察される。今後は、水中動作の解析を進め筋活動パターンとの関係について詳細に検討していく予定である。
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