研究概要 |
Magnetic Resonance Imaging(MRI)を使用し,大動脈形状(湾曲,長さ)を非侵襲的に評価し,健常な若齢者と高齢者とで比較すること,および大動脈脈波速度(PWV)測定における大動脈形状の影響を明らかにすることを目的とした.被験者数は270名(19〜79歳,男性124名,女性146名)であった.この中から,若年者(27±5歳,平均値±SD,男女各9名),正常血圧高齢者(64±3歳,男性8名,女性9名),高血圧高齢者(65±4歳,男女各8名)を無作為抽出し,Frank法によるPWV測定に用いる推定動脈長(体表面上の距離計測),MRIによる大動脈長,およびそれぞれの距離を使って算出されるPWVの値を比較した.Frank法の推定動脈長に男女差は認められなかったが,高血圧高齢者が若年者に対して有意に高値を示した.MRIによる大動脈長は女性に比べて男性が高値を示す傾向にあった(P=0.06).また,若年者に対して正常血圧高齢者および高血圧高齢者で有意に高値を示した(いずれもP<0.05).MRIによる大動脈長は推定動脈長よりも長く,その誤差は,若年者(6.8±10.3cm)に対して正常血圧高齢者(14.8±9.6cm,P<0.05)および高血圧高齢者(14.3±8.9cm,P<0.05)が有意に高値であった.推定動脈長とMRIによる大動脈長から算出した大動脈PWVの誤差は,若年者(91±134cm/sec)に対して正常血圧高齢者(277±185cm/sec,P<0.05)および高血圧高齢者(297±190cm/sec,P<0.05)が有意に高値を示した.また,女性に対して男性で誤差が大きい傾向にあった(P=0.07).以上の結果,通常用いられている体表面での動脈長推定法で算出される大動脈PWVはMRIによる実測大動脈長を使って算出した本来の大動脈PWVよりも過小評価されること,また,この過小評価の程度は,加齢に伴い大動脈長が延長するため,高齢者で大きくなることが示唆された.
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