研究概要 |
【目的】C型慢性肝炎例では肝の炎症,肝組織への鉄蓄積,あるいはインターフェロン(IFN)治療中でのIFNやリバビリンの作用により酸化ストレスは増大している。そこで肝疾患患者で欠乏し,補給により抗酸化作用を介した病態改善効果が期待される亜鉛の補給について検討する。【計画】対象はPEG-IFN ・-2b/ribavirin療法を受けるHCV genotype 1b・高ウイルス量のC型慢性肝炎患者23例で,全例にビタミンE(300 mg/day)・ビタミンC(600 mg/day)を併用投与した。対象患者を亜鉛製剤ポラプレジンク投与群(150 mg/day,亜鉛相当33.9mg,Zinc群,12例)と,非投与群(Control群,11例)とに無作為に割付けし,48週間の経過観察を行った。【結果・考察】治療継続例において両群を比較すると,血清ALT値は12週目においてZinc群で低値であり(pく0.05),またALT値が24週目に基準範囲(7-44 U/L)内に低下した症例は,Zinc群で100%(9/9),C群で67%(8/12),48週目に基準範囲内に低下した症例は,Zinc群で100%(7/7),C群で60%(6/10)であった。治療継続例のうち48週目におけるHCV RNA陰性化率はZinc群で100%, Control群で80%であった。 Zinc群では血漿過酸化脂質濃度の明らかな減少と赤血球膜リン脂質脂肪酸組成の維持が認められたのに対し,Control群では多価不飽和脂肪酸の明らかな低下が認められた。投薬量やその他検査値の推移について両群間に明らかな差は認められなかった。これらの結果より,亜鉛投与は肝での抗酸化作用の増強を介した肝細胞障害抑制により,PEG-IFN、α-2b/ribavirin療法時における補助治療として有用であることが示唆された。
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