研究概要 |
コリンは、メチル基の代謝や脂質の輸送に関係し、膜リン脂質であるレシチンやスフィンゴミエリン、プラズマロゲン、神経伝達物質であるアセチルコリン、血小板活性化因子などの多くの重要な生体化合物の構成成分であるが、ヒトでは必須ではないとされてきた。しかしながら、最近の臨床研究により、コリンは肝機能を正常に維持するために必須であることが示唆されており、最近米国では適性所要量が提唱された。現在非栄養性機能物質のデータベース作りが進められているが、コリンはビタミンに準ずるものでありながら、わずかな食品を除いて、食品中の含有量はほとんど調べられていない。また実際の食事でどれほど摂取しているかの調査もほとんどされていない。そこで一日の食事、特に病院で提供される治療食中の遊離コリンの含量の測定を行った。 遊離コリンの測定は、Barak(Lipids,14,304-308,(1979))らの方法を改良して行った。まず食品をホモジナイザーで粉砕し、5%トリクロロ酢酸で抽出した。次にエーテルでトリクロロ酢酸を洗浄した後、pHを7-8に調整し、活性炭で脱色して試料溶液とした。その試料溶液に、ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液を加え沈殿を作り、上層を除いて沈殿をジクロロエタンに溶解し、分光光度計(365nm)で比色定量した。 陰膳方式で4つの病院で提供されている一日分の食事を集めそれを試料とし、70日分の治療食について遊離コリンの摂取量を測定した。その結果、一日の食事の摂取重量は平均1886gで、遊離コリンの摂取量は平均91.4±29.2mgであった。以前の研究で女子大生および小学生児童の一日の遊離コリン摂取量を測定しており、それらの平均値と比較すると食事の摂取重量はほぼ同程度であるが、遊離コリン摂取量は治療食の方が多く摂取していた。
|