研究概要 |
今年度は,昨年度までの教育内容,教科目標(数学、科学、技術)分析の結果に基づき,カリキュラムの具体化と,その実施,効果の検証を試みた。カリキュラムの具体化にあっては,数学、理科、技術それぞれの学習内容に含まれるキーコンセプトをもとに,エネルギ変換に関わる問題(太陽熱、風力の利用など)を取り上げ,風力発電技術を題材とした中学校2年生向けカリキュラムの実施に向けて研究を進めた。このカリキュラムでは,エネルギー問題だけでなく,材料や資源の利用に関する問題,地球環境の問題に関連させた内容を取り入れ,内容の現代化を図った。また,学習内容は工学的な問題解決学習を中心に,数学的モデルによる結果の予測や,原理理解とその活用に関する活動を導入し,ものを生み出す創造の過程に数学、科学、技術それぞれのアプローチ(特徴的な思考方法、概念、スキル)が有効であることについて取り扱った。また,このカリキュラムに必要な発電教材の開発も並行して行った。カリキュラムの試行にあたっては,東京都内の2校の中学校を対象として年間を通して実施した。 その結果,生徒らは,ものづくりという工学的プロセスにおいて,数学や理科の学習の有効性を感じ取り,学習に対して積極的な姿勢を示した。また,理論的な学習においては,エネルギー学習の基礎となる電気に関する基礎的知識を70%以上の生徒が正しく身につけるなど,技術教育の学習が他教科への効果的な影響を及ぼすことを示唆する結果を得た。また,数学的な能力の高い生徒,理科的な能力の高い生徒,ものづくりの得意な生徒など,学習者の能力によってこのカリキュラムへの関心や意欲に差が生じることを示唆するデータを得ることができた。今後,データの詳細な分析と引き続きの実践的取り組みが求められる。
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