研究概要 |
各種メーカ,ユーザ企業によらず,熟練者の技能・知識を組織内資産として維持・継承することが最重要課題である.また大学サイドでは,学内シーズを軸に産学連携・社学連携へと展開するために,技術そのものに精通し,かつその本質を見抜いた上で技術翻訳可能な人材の育成が要請されている.本研究では,ものづくり現場での熟練技能継承,特には伝統産業において長年その伝統技能を引き継いできた徒弟制度的な技能継承の構造に着目し,3つの視点,1)人から機械への継承(道具),2)人から人への継承(関係),3)組織の中での継承(価値観),を統一した技能継承の技術化スキームとして,その特徴抽出を行った. 平成17年度の成果は,この技能継承の技術化スキームによるインタビュー分析,ビデオ解析より,熟練者自身が気づいている技能継承のための伝達作用と,ほか見習いが気づいている伝達作用を組み合わせること,さらには両者のコミュニケーションが共有している道具に対する理解・態度が,技能継承コミュニケーションの理解を深めることを明らかにした.本成果は学術雑誌に投稿され,またこの成果と関連して,企業組織内における技能継承の課題について解説論文として報告した. また,ポスドク人材流動化プロジェクトの一環として,技術シーズと潜在的ニーズを結びつけることを期待される産学連携コーディネータの育成研修会において,コミュニケーションモデルに関する紹介と,スキルトレーニングのためのコミュニケーションゲームを試行した.またこれら徒弟制度的な技能継承の本質と人材育成の関係について,鉄鋼協会主催のワークショップにて報告した.
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