研究概要 |
河成層の累重様式と平野微地形の形成過程を,堆積物のボーリング調査にもとついて論じた.今年度は,濃尾平野の河成低地を構成する旧河道と自然堤防上で採取された堆積物コア(AP1およびAP2)を解析し,堆積物の特徴や堆積時期,堆積速度などを検討した.調査地点は岐阜県安八町である. その結果,以下のことがわかった.約3200yrBP以降,両地点は後背湿地の環境となり,植物遺体を多く含む泥の堆積が続いた.その後,揖斐川がAP1コア採取地点の上を流れるようになり,AP1コアの後背湿地堆積物の一部は侵食を受けた.一方,AP2コア採取地点では,砂質の自然堤防堆積物が後背湿地堆積物を覆って急速に堆積するようになった.堆積物の年代測定結果によれば,この地点が揖斐川の流路となったのは,約400cal BP以降と考えられる.歴史記録によると,揖斐川の流路がAP1を通過するようになったのは慶長年間(1596-1615年)の洪水時とされている.したがって,本研究で得られた年代測定結果は,歴史記録とも矛盾しない. 年代測定結果にもとついて,河川成堆積物の堆積速度を推定した.後背湿地堆積物の堆積速度は,AP1コアで約0.1cm/yr, AP2コアで約0.2cm/yrとなる.一方,自然堤防堆積物の堆積速度は約1.5cm/yrであり,後背湿地堆積物の堆積速度に比べて約4-15倍大きい. 河成層の厚さは,AP1コアで7m, AP2コアで10m程度となっており,河成層の下限の標高は約-3mとなり,現在の海水準よりも明らかに低い.これは濃尾平野が養老断層の活動に関係して沈降傾向にあるためだと考えられる. なお,研究成果については,2006年夏の国際堆積学会および2007年春の日本地形学連合春季大会で発表した.
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