研究概要 |
インドネシア・中央カリマンタンの泥炭地において、現地表面スペクトルおよび、地下水位の計測を行った。スペクトルデータサンプリングは1997年および2000年に泥炭火災の影響を受けた地域であるカランパンガンの草地(2.323207S,114.0165E)において、衛星画像データとのリンクを図るため晴天日の午前中に行った。取得データはハイパースペクトルデータ(325-1,075nm)であるが、LANDSAT、ALOS、QuickBird衛星データなどの波長バンドに対応させるため、青・緑・赤・近赤外線の4バンドに集約した。地下水位データは、カランパンガンの火災跡草地(上記)および森林内(2.34750S,114.03680E)、セティア・アラム森林内(2.32099S,113.90122E)において取得した。現地実測データと広域対応させるための衛星画像には中分解能衛星MODIS (250m分解能)の多時期植生指数画像を用い、現地データと衛星データとのリンク手法開発のための解析を行った。植生指数には16-days植生指数データの正規化差植生指数(NDVI)およびエンハンス植生指数(EVI)データセットを用い、これらを1か月コンポジットデータに変換した。 解析の結果、植生指数変動と地下水位変動との間の関係性が示唆された。2006年3月から9月の結果を考察すると、カランパンガンにおけるEVI変動パターンが地下水位変動パターンと逆であることから、草地および森林部ともに低地下水位時に植生が活性となる、嫌雨性のフェノロジー植生被覆であることが認められた(Shimada et al.,2007)。ただし、火災の影響を受けていない森林地区であるセティア・アラムにおいては、2001年の変動では地下水位とNDVIの季節変動パターンが同期していることから、好雨性のフェノロジー植生被覆であることが認められた(Shimada et al.,2006)。このように現れるフェノロジーの違いが、泥炭蓄積状況を含めた立地環境の推定のパラメータとして利用できることを示唆した。今後は、現地表面スペクトルデータと衛星画像データとのリンクにより、より詳細な地表面被覆状態の広域把握に努める。
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