研究概要 |
消費者行動に起因する環境負荷を計測するために,新しい分析モデルを提唱した。産業連関モデルやその拡張モデルを用いた消費者行動の分析では,消費者行動の制約として,もっぱら消費の金銭的な側面のみを考慮した分析が行われている。しかし,消費者は,同時に,限られた時間の中でどのような消費行動をとるかの選択も行っている。したがって,消費者行動の分析には,所得制約だけでなく時間制約も同時に考慮する必要がある。この観点から,本研究で提唱した分析モデルは2つのサブモデルで構成される。一つ目は廃棄物産業連関モデル(WIOモデル)であり,もう一方は「新しい消費者モデル」あるいは家計生産モデルと呼ばれる消費者モデルである。これらのモデルを統合して用いることにより,シナリオ分析では,消費パターンの変化前と変化後で,総費用と必要時間を一定に保つように各消費技術の稼働水準を変化させることができる。したがって,所得に関するリバウンド効果と時間に関するリバウンド効果を考慮した上で,両消費パターンが直接・間接に誘発する環境負荷を比較することが出来る。本研究の目的は,(1)WIOモデルを用いた消費財のライフサイクルインベントリー分析(LCI分析)を行うこと,(2)所得と時間に関するリバウンド効果を考慮するモデルを開発すること,(3)日本の平均的家庭についてシナリオ分析を行うことである。環境負荷因子としては,家計が消費・廃棄行動を通して,直接・間接に排出する二酸化炭素と必要とする埋立容積の2つを考慮した。また,シナリオ分析では,持続可能な家計消費パターン(環境負荷のより少ない消費パターン)とされる典型的なシナリオとして,自家用車から公共交通機関への交通手段の振替,エネルギー効率を高めるための各家計での調理の食堂での調理への振替を採用し,現状シナリオとの比較を行った。
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