研究概要 |
近年、バイオテクノロジーや医療の研究分野において、技術・機器の微細化がかなりのスピードで進行している。例えば、単一細胞をナノレベルで操作する技術や、複雑で微細な構造をもつ臓器や脳へのピンポイント治療技術の構築(あるいは高度化)が、近年大変重要視されている。このような微小領域における操作では、現在は、孔径が約500nmのガラスキャピラリーが用いられているが、より的確な操作のためには、さらに細い細管が要求されている。しかしながら、孔径が500nm以下のガラスキャピラリーの作製は非常に困難であるため、これに代わるまったく新たな材料の出現が望まれている。 そこで本研究では、孔径が500nm以下で酸化物からなる「酸化物ナノ針」を開発することを目的として研究をすすめてきた。そして、我々のグループが独自に開発した「酸化物ナノホールアレイ」に関する技術を応用することで、酸化物ナノ針を作製することに成功した。 まず、TiO2,ZnO,SnO2,ZrO2などで、酸化物ナノホールアレイを作製し、ナノホールアレイの構造と作製条件の相関を詳しく研究した。ナノ構造が構築されるメカニズムを解明するとともに、孔径や壁面の厚さなどを自由に制御するための手法を確立した。 次に、作製したTiO2ナノホールアレイの光触媒特性を評価した。ナノホールアレイに光を照射することで、アセトアルデヒド等の有害物質が分解されることを確認した。この光触媒機能を利用することで、ナノ針として用いた際、針の内外面を滅菌することが可能となる。 最後に、酸化物ナノホールアレイをバラバラにすることで、ナノ針の作製を試みた。試行錯誤の結果、孔径200nm、長さ7μmのTiO2ナノ針を作製することに成功した。
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