研究概要 |
本年度は,マルコフ型ソフトウェア信頼性モデルおよびソフトウェア可用性評価モデルを用いて,ソフトウェアの信頼度成長過程およびフォールト修正困難度の上昇傾向を考慮したシステムの処理性評価モデルを構築した.コンピュータシステムの形態として,OLTP(オンライントランザクション処理)システムなどの,同時に複数の処理を行うマルチタスクソフトウェアシステムを想定した.このとき,各タスクに処理時間制約が設定されている場合を考慮して,リアルタイム性を評価できるようにモデルを構築した.そして,ある時刻tまでに到着した仕事のうち,処理時間制約内に処理できる仕事数の確率分布を,無限サーバ待ち行列理論を用いて解析し,非同次ポアソン過程で与えられることが分かった.構築したモデルに基づき,時間区間(0,t]における累積仕事処理完了率や,時刻tにおける1トランザクション当りの損失率という,信頼性と処理性を同時に考慮したソフトウェアシステムの新たな性能評価尺度を算出することができた.これらの評価尺度は,テスト工程で実施されるデバッグ回数およびその後の運用時間の関数として表されるので,ソフトウェア開発管理者がテスト工程の進捗管理を行う上で,本モデルは有用である. ソフトウェア信頼性モデルの代表的な応用例として,ソフトウェアの最適リリース問題がある.本研究で構築するモデルをこの問題に適用するための準備として,本研究の基礎となるマルコフ型ソフトウェア信頼性モデルおよび可用性モデルを,この最適リリース問題に適用し,各モデルに対して最適リリース方策をまとめた.
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