研究概要 |
広域津波災害発生直後に沿岸部自治体(府県・市町村)が行う初動対応の意志決定を支援する津波防災情報システムを構築した.東海地方から九州にかけての沿岸部において発生する巨大地震を想定し,以下の要求仕様を満足するシステムのプロトタイプを開発し試験運用を行った.(1)津波発生直後にリアルタイムでシミュレーションを実行し,特に最大津波高さ,最大流速を表示すること.(2)津波の予測情報と観測情報を一元集約して表示すること. 次に,巨大津波発生直後に津波災害が社会に与える影響度や地域の津波災害に対する脆弱性を評価する指標として,津波影響人口PTE(Potential Tsunami Exposure)を提案した.2004年のスマトラ沖地震津波災害に適用した結果,この津波災害によるインド洋の津波影響人口PTEは,インド洋沿岸部に来襲する4.09m以上の津波に対して推算すると2005年2月時点の死者・行方不明者数297,046人とほぼ一致することが分かった. スンダ海溝に沿って発生し得るM9クラスの巨大地震の4シナリオを想定し,インド洋の津波災害ポテンシャルの評価を行った.それぞれのシナリオに対してPTEを算定した結果,ベンガル湾に向かうシナリオ(1)の津波が最も甚大な人的被害を及ぼし得ることが分かった.2004年型と同じ規模で津波が発生した場合,5.7m以上の津波に対するPTEは70万人以上におよぶため,2004年のケースが必ずしもインド洋における最悪のイベントになるとは限らないことが示された.
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