研究概要 |
1.吉野川河口干潟には,全国的にも減少が著しいヒロクチカノコガイを含む4種の絶滅危惧種の貝類が高密度に存在し,健全な個体群が維持されていることが明らかになった.特に,ヒロクチカノコが,これほど高密度に健全な個体群を維持している干潟は他に無いものと思われる. 2.これらの4種が生息している干潟の周辺では現在架橋工事が行われているが,3年間のモニタリングでは,特に知覚しうる影響は見られなかった.しかしながら,その影響の有無を判断するには,工事後も含めた長期間にわたるモニタリング調査が必要であろう. 3.4種の中でもヒロクチカノコに注目し,その生活史特性を明らかにした.月1回の定期調査を軸に,標識再捕,産卵期には産卵基盤の設置をおこない,成長,産卵,寿命などについて明らかにした. 4.前年の調査により,ヨシの枯れ葉がヒロクチカノコにとって重要な役割を果たすことが明らかになった.よって今年度は,毎月の定期調査時に枯れ葉の測定を行い,季節変化を明らかにした.さらに,毎月リターバッグを設置して,ヒロクチカノコによる枯れ葉分解速度の季節変化を明らかにした.また,年に4回小型甲殻類,バクテリアをふくむリターバッグ実験を行い,それぞれの枯れ葉分解速度を計測した. 5.ヒロクチカノコおよびフトヘナタリが分布する干潟のランダムに設定した150地点において定量調査を行った.同時に,標高,粒度組成,水分,枯れ葉の量,ヨシの密度などの環境要因を計測し,ヒロクチカノコの分布に影響を与える要素を解析した. 6.この研究結果の一部は,2006/9/29の日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会(広島)にて発表を行った.
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