研究概要 |
本年は、3年にわたる最後の研究機関にあたるために、総仕上げをする年度であった。 先年までにゲッティンゲンのパウリーナー協会旧大学図書館で多くの文献を収集したが、本年度はゲッティンゲンと縁の深いハノーヴァーのライプニッツ図書館ならびにヴォルフェンビュッテルのアウグスト公図書館でさらなる文献収集して、旅行記および人種論に関する自然科学関連の資料をかなり補完することができた。 昨年度にドイツのカッセル大学ゲオルク・フォルスター学会の国際シンポジウムでおこなった口頭発表を加筆して学術論文としたものが、本年度発行の機関誌であるGeorg-Forster-Studien第12号第2分冊に掲載された。 また関西大学東西学術研究所での国際シンポジウム「アジア・世界をつなぐ海の回廊-文化の出会い-」(2007年1月19〜20日)において、口頭発表「クックがみたタヒチの食と儀礼」をおこなった。内容は、ヨーロッパ人航海者たちの航海記を基礎として、南太平洋諸島の住民の食習慣を恣意的に解釈しようとする植民地主義的視点の分析であって、これまでに収集した資料を駆使して、古典的原典資料を、現代の文化人類学の視点によって分析しながら、文明と文化の対比と将来的な多文化共生社会のあり方を考察するものであった。 その一方で、近代の旅行記や航海記の研究と関連して、ヨーロッパ中世における文化交流、紀行文学、キリスト教を調査していたが、その過程で、非常に興味深い文献であると判断したマルギット・バッハフィッシャーのMusikanten, Gukler und Vaganten(Augsburg, Battenberg,1998)を共訳で出版した。
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