研究課題/領域番号 |
16720068
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
各国文学・文学論
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
米山 正文 宇都宮大学, 国際学部, 助教授 (80323319)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2006年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 米文学研究 / 旅行記 / 19世紀 / 米国文学 / ナショナリティー / エスニシティー / 19世紀米国 |
研究概要 |
対象とする米国作家をワシントン・アーヴィングに定め、同作家のヨーロッパ旅行記である『ヨーロッパ旅行の手紙と日誌1804-1805』と『スケッチブック』を分析した。ナショナリティとエスニシティの分析の過程で、アーヴィングが極めてトランスナショナルな作家であること、ヨーロッパの伝統文化を自分のものとしていく過程で、枯れの文化的アイデンティティーは欧州と米国の混交したものであるという結論に達した。よって、その混交の態様を分析することが必要となったため、欧州の文化をアーヴィングがどのように領有していったのか、欧州の文化といっても歴史的に変容していくため、どの時代のどの文化をどのように領有していったのか、という2点を考察することが必要となった。 本研究では、その目的のために、欧州文化の題材として「廃墟」のイコンに注目し、18世紀〜19世紀における欧州の廃墟の文化史を考慮したうえで、アーヴィングが旅行記の中で(あるいは小説の中で)それにどのように反応し、それをどのように取り込んでいったのかを分析した。本研究で得た結論は以下の3点である。(1)『手紙と日誌』では19世紀初頭当時の欧州の廃墟趣味をそのまま表面的に模倣し、『ニューヨーク史』においてオランダ植民地政府の廃墟を扱うことでゴールドスミスや墓畔派の感傷的な灰虚像を取り込み、『スケッチブック』では欧州の廃墟文化の理解が深められ、同時代だけでなく18世紀初頭からの伝統を踏まえながら、灰虚像が多様化・深化している。(2)灰虚像をめぐり、欧州の新古典主義とロマン主義の両方の吸収が見られるが、新古典主義に対する恐怖、「崇高なもの」を求める扇情的なロマン主義への嫌悪が見られる。歴史的ロマンスやゴシックロマンスのみを領有している。(3)アーヴィングをアメリカというコンテクスト(共和主義やアメリカ・ロマン派)に限定するのは危険であり、欧州文化の吸収を念頭におかなければならない。
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