研究概要 |
今年度は,昨年度撮影・電子化した中期朝鮮語文献及び影印本を元に,『牧牛子修心訣』,『般若心經[諺解]』,『彿説阿彌陀經[諺解]』,『内訓』,『霊験略抄』,『分類杜工部詩』,『訓蒙字会』等,様々な分野・時代に渡る,声点(アクセント)情報を含む中期朝鮮語文献のテキストデータを作成し,形態素分析を行った。その上で各文献のKWIC索引を作成し,それに基づき,中期朝鮮語の各語彙のアクセントを一覧できるアクセント辞典を作成した。更に自分で入力したデータだけでなく,既存のKWIC索引(『月印千江之曲』,『月印釈譜』,『釈譜詳節』等)も活用して語彙項目を増やした。現時点で語彙項目数は約4,000語である。本辞典では見出し語とアクセントだけでなく,品詞,現代朝鮮語の対応語及びその長短,日本語による意味等も記載した。本辞典は表計算ソフトで作成したため各項目別のソートが可能であると共に,現代朝鮮語からの逆引きや日本語の意味からの曖昧検索等も可能である。 一方今年度は,アメリカ合衆国・MIT言語学科に客員研究員として滞在中,中期朝鮮語アクセント・イントネーションの諸性質についての研究を行った。現在,今回作成したアクセント辞典を活用しつつ,その研究成果を論文にまとめている。中期朝鮮語アクセント辞典は,この論文が完成し次第,公表予定である。また上記の検索システムは,web上でも公開することを予定している。(入力したテキストデータは既に「中期朝鮮語漢字音・形態素データベース」http://joao-roiz.jp/KRMORPH/に利用されており,各形態素の用例が検索可能となっている。) 今年度の科学研究費補助金は,主としてMIT言語学科において中期朝鮮語アクセント研究を進めるための渡航費用・滞在費用として使用した。
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