研究概要 |
音声指導の重要性に関しては,近年多くの研究が提言を行い,また教科書もいくつか出版されている。だが,何か教材があればどんな教師でも十分な指導が行えるわけではない。『1日10分の発音練習』(くろしお出版、2003年)は,体系的韻律指導の理念に基づき,文イントネーションとアクセントが順を追って理解できるように構成された教科書である。その効果および指導上の留意点については,これまでの試用で多くのことがわかったが,実践の多くは本研究者によりなされたもので,どのような教師が行っても同様の効果が期待できるのか,問題を解決できるのかは明らかでない。そこで本研究では,音声教育にあまり詳しくない日本語教師2名に、事前指導なしで教材を使用してもらい,本研究者が授業観察を行った。観察期間は2005年1-2月,2005年10-11月,2006年1-2月の3期である。 その結果、「教科書の提出順のまま教える」「拍単位で区切って発音しすぎる」「聞き取りで内省時間を与えない」「韻律の規則を考えさせない」「発音の評価が甘い」「すぐに正答を与え,リピートさせる」「訂正時,リピート以外の方法を取らない」などの問題点が明らかになった。 これらの問題の改善策について、本研究者と授業担当教師との間で議論し,次のような改善策を得た。「音声教育の到達目標を明確化し,いつ何をやるかを最初に考える」「音節単位でモデル発音を与える」「聞き取りの際,時間をかけて誤りを学習者に内省させる」「抑えるべき規則を学習者自身に考えさせる」「発音は厳しめに評価する」「すぐに正答を与えないでモニターさせる」「リピート以外の様々な訂正方法を用意する」「良い学習者を活用する」など。
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