研究課題
若手研究(B)
本研究において主要な対象とする西日本縄文時代後半期は、東日本由来文化要素の波状伝播による文化変容及び、縄文時代晩期末における韓半島からの稲作農耕に関する文化情報の流入などにみられるとおり、長期的に異文化接触と文化変容が繰り返し認められる時期といえる。本研究は、上記のような文化変容の動態と社会動態の相互関係について、集落遺跡における空間構造の分析、隣接分野における社会モデルの比較検討という項目を軸に、明らかにすることを目的とする。そのため、方法論的検討が必須であることから昨年度に引き続き、縄文社会論において重要な社会モデルとして採用されるComplex Hunter-gatherersモデル及び北米北西海岸地域狩猟採集民社会の民族誌モデルの検討を行い、縄文社会論研究への適用の現状と問題点について明らかにした。その結果、(1)社会モデル・民族誌モデルと考古学的事象の接合における体系的モデル構築及び検証の必要性、(2)適用する社会モデルあるいは民族誌モデルの批判的検討、とくに西欧世界との接触期を挟んでの社会・文化変容の批判的検討の必要性等の問題点を明らかにした。このような近年の縄文社会論の抱える問題点をふまえ、社会論構築の基礎的作業として、上記のうち(1)モデルと考古学的事象の接合をより体系的に行うため、九州北部から中九州を中心とした代表的な集落遺跡における遺物・遺構の詳細な空間分布の分析により、集落構造及び集落内での活動について検討を行った。昨年度における社会編成に関する検討と同様、対象地域における縄文時代後・晩期を中心として社会編成が水平的な軸においてより複雑化していく点について明らかにした。これらの研究成果は、昨年12月に福岡市で開催された九州史学会(「縄文時代社会論の現状と課題」)及び、今年1月に大阪市で開催された世界考古学会議中間会議("Fragmentation and globalization : an examination of archaeological studies of the Jomon Period, Japan")において口頭発表を行った。また、狩猟採集民社会民族誌モデルの先史社会論への援用にかかわる諸問題についての研究及び、それらを踏まえた対象時期における集落構造と社会編成に関する個別研究についての論文を現在準備している。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
東アジアと日本-交流と変容 2
ページ: 19-28
40007141529
東アジアと日本-交流と変容-九州大学21世紀COEプログラム(人文学)東アジアと日本:交流と変容 第2号(印刷中)
Interaction and Transformations : Bulletin of Japan Society for the Promotion of Science21st Centry COE Program(Humanities) Vol.2(印刷中)
Bulletin of Japan Society for the Promotion of Science 21^<st> Century COE Program (Humanities), East Asia and Japan : Interaction and Transformations 2
ページ: 35-50