研究課題/領域番号 |
16730001
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
基礎法学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
桑原 朝子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (10292814)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2005年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2004年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 政治 / 批判 / 和歌 / 歌物語 / 意識構造 / 自由 / 伝奇小説 / 儒教 / 貴族 / 法 / 社会構造 |
研究概要 |
本研究は、いわゆる摂関体制が確立した平安中期に焦点を当て、僅かな権勢者間の利害調整と化していた当時の「政治」に対し、表向きは逆らわずただ文芸の世界に閉じこもることによってそこから敢えて距離をとる、という消極的な形の批判を示した、文人貴族や没落貴族の意識構造を、主に和歌や歌物語等の文学史料の分析により解明したものである。 抒情詩の一種である和歌は、権力から距離をとる意識構造を涵養する側面を持つ一方で、儀礼の場で用いられ、天皇および摂関家の権力と堅固に結びついて発展してきたという歴史的背景をも有する。後者の面を如実に示す一例が、当時繰り返し編纂された勅撰和歌集であるのに対し、前者の面を引き立てる好例が歌物語であり、これらは、政治的な問題を鋭く意識しつつもそれに直接言及することは避け、敢えて勅撰和歌集に採録されない和歌を取り上げることによって対抗意識を示したり、反摂関家を象徴し貴族社会の規範に囚われない人物を、主人公に仕立てたりしている。政治権力から離れたところで個人的な自由を享受しようとする態度は、歌物語に大きな影響を与えた唐代の伝奇小説の作者にも見られるが、彼らが一方で儒教の価値観に規定されており、こうした観点からの評言を作品に付すことがあるのに対し、歌物語にはそのような記述は見られない。ここに端的に表れている、平安中期の貴族社会における儒教の弱さは、文芸作品に内在する価値の一貫性を担保する方向に働いた反面、中国以上に文芸が政治の場から疎外され、そこにおける「政治」批判の形態が逃避的・消極的なものに限定される傾向をも推し進めたと考えられる。この「政治」批判の形態は、作り物語等のその後の文芸にも受け継がれており、日本の知識人の態度の一つの典型となったといえよう。
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