研究概要 |
本研究においては,従来独占が認められていた事業者が,ネットワーク等の不可欠施設を有しているため,市場支配的地位いあるという認識に基づき,主にドイツの法制度及び場合によってはEU法に基づき,学説・紛争事例の分析を通して,競争促進的な経済法制の在り方を明らかにすることを目的としている。 第一に,独占禁止法ないしはいわゆる競争法における,不可欠施設の理論についての考え方を検討した。ここでは、ドイツの独占禁止法に当たる競争制限防止法における,不可欠制限質を念頭に置いている規定の意義,さらに具体的な事例の分析を通して運用上の問題を明らかにすることを試みている。 具体的な事例では,電力エネルギー分野に関する事例が多く見られ,判例の蓄積も進んでいる。当該分野における競争の導入・促進に際して一定の役割を果たしてきているといえる。他方で,一連の事例の分析からは,今後との課題としては価格規制の問題があることが明らかになった。ドイツでは,この問題に取り組む判例も増えてきており,今後も判例の展開に注目していく必要が有る。 第二は,不可欠施設理論から発展して,電気通信事業における規制の在り方を検討している。ここでは,主にドイツ法に基づき,。学説及び紛_具体的事例を手がかりにして,規制の特徴・今後の課題を明らかにした。電気通信事業に関しては,比較検討対象としたドイツ法においては、事業法がきわめて重要な役割を果たしており,競争制限防止法の役割としてはむしろ補完的であることが明らかになった。ここでも,電気通信事業法に基づく料金・価格規制が重要な課題となっている。 最後に,不可欠施設と知的財産権件の関係を主にEU法をてがかりに検討している。いわゆる規制産業においては,規制対象の範囲及びとりわけ価格規制の在り方が今後の大きな課題となっており,引き続きこの問題について,学説・判例に注目していく必要が在る。
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