研究概要 |
本年度は,次のような調査研究を行った. 1.前年度の研究に引き続き,ドイツ法における捜査段階における権利救済制度を中心に基礎的調査及び分析を進めた.その際,研究計画に従って,ヨーロッパ人権裁判所を中心に形成されつつある判例法が,どのようなインパクトを与えているかということを調査・確認した. わが国では,近時,捜査段階での刑事訴訟法の規律と行政法の規律が密接に関連し,その実質的な交錯が指摘されている.ドイツでも同様である.さらに従来,事前審査のあり方に関心が集まってきたことも同様である.もっとも,わが国と比較して,実質的な交錯が考慮されざるを得ない分野として,事後的な権利救済への関心が高まっている.1つには,令状主義を憲法上の原理と位置づけるわが国と異なり事前審査が限定的なものとなっていること,また証拠禁止などの制度が権利救済としての性格が強く認識されているため,刑事手続における早い段階でのむしろ権利救済の先取りが目標とされていることが,その背景をなす.今期の研究では,上記のような基本的な視点につき確認し,刑事手続における全体的な権利救済制度との結びつきを考察するための手がかりを得た. 2.わが国の議論との比較・分析については,上記確認をもとに着手し,検討を開始している.十分な成果を得るには研究の継続が必要となるが,現時点におけるわが国の議論状況についての基礎的視点を得られたものと思われる.
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