平成16年度は、1994年ドイツ倒産法における担保権の処遇の研究を進めた。とくに、1994年ドイツ倒産法施行後の再建型企業倒産手続および担保権の実行中止(停止)の運用について研究を進め、次のことが明らかとなった。すなわち、株式会社と有限会社とで、再建手法が異なり、前者の場合には法人格を維持したままでの再建が比較的多いが、後者の場合には、営業譲渡あるいは清算が行われることが多い。1994年ドイツ倒産法では、手続費用さえも捻出できず倒産手続に入ることができない、いわゆる「破産の破産」という状況を脱することが重要な目的の一つとされており、手続の早期申立てを促進するよう手続開始原因などに工夫が凝らされたが、再建の割合が増えている点で、この目的は達せられているといえる。 担保権の処遇については、譲渡担保および所有権留保の実行が倒産手続において停止される事例は見られるが、その根拠は倒産法21条1項1文なのか、2項3号なのかという点で、見解が分かれている。この点については、現在も研究を進めている。また、強制競売強制管理法30d条による不動産担保実行停止の保全処分命令は、頻繁に発令されているが、この保全処分命令をめぐって争われた判例はあまり多くはない。わが国でも、例えば民事再生手続において担保権の実行中止命令が発令されることがあるが、件数自体はあまり多くはなく、発令に対して慎重な態度が伺われる。また、担保権消滅請求をめぐっては、裁判例が多く見られている。このようなわが国の状況と比べると、ドイツでは不動産担保実行停止の保全処分命令が頻繁に発令されているにもかかわらず、批判や争われる事例があまり見られないのは何故か原因を探る必要がある。平成16年度の研究成果は、平成17年度の研究と合わせて公表する予定である。
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