研究課題/領域番号 |
16730074
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
政治学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠山 隆淑 九州大学, 大学院法学研究院, 専門研究員 (60363305)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2005年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2004年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | ウォルター・バジョット / 政治思想史 / ヴィクトリア時代 / リーダーシップ / ビジネス / イギリス国制 / イギリス政治思想史 / 政治的リーダーシップ / 管理運営・経営 / 議会政治 |
研究概要 |
ヴィクトリア時代中葉にEconomistの主筆を務めたウォルター・バジョット(1826-77)は、「政治はビジネスの一分野である」という視点から一貫して政治論を展開した。この立場から彼は、政治とは「財産と教養」(不動産と古典教養)を有した「ジェントルマン」(地主階級)によって担われなればならない、という当時のイギリス国民一般の通念を読み替えた。すなわち、バジョットは、大工場経営者などの「事業経営者」たちも株式などの「ビジネス財産」を持ち、経営によって培われた「ビジネス教養」を有した「ビジネス・ジェントルマン」なのであるから、彼ら上層中流階級も政治支配者層の一員になるべきだと主張した。彼によれば、政治をビジネスとして行うことの基本条件は、「細目事項(detail)」の処理を重視することであった。バジョットは、産業革命後の急激な経済発展ならびに社会構造の変化の中で、統治業務が質量ともに大きな変容を遂げた「ビジネスの時代」にあっては、美辞麗句を巧みに操る演説を賛美するような「真摯さ」や「責任感」を欠いたアマチュア地主政治家による細目軽視の政治手法はもはや時代遅れだと考え、そうした議論や風潮を批判した。政治家個々人の担当業務の細目全体を網羅的かつ精力的に取り組む真摯な態度こそ、「管理運営者(administrator)」として、新たな時代の政治的要請に応える広範な経営的視野ならびに社会が進んでいく進路の予測を行うことができるのである。加えて、統治の基本路線として従来のウイッグ統治の継続を望んだ彼は、「管理運営者」と従来イギリスを統治してきた有能なウイッグとの知性や精神的あり方の共通性を指摘した。以上の議論から、バジョットは、いわば政治における経営文化の創造を唱導することで、産業の大規模化や社会の急激な変化に適応できず、従前のままでは政治的リーダーとしての地位を保持しえないと見たウイッグの政治的再生を目指したと言える。
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