研究概要 |
1.経営者による合併の近視眼的な決定に関する動学的研究 (1)合併の戦略的意思決定行動の分析 国際貿易のフレームワークに寡占理論を適用し,外国企業による国内企業の買収問題を考察する理論モデルを構築し分析を行った.買収企業と被買収企業との間に,買収後も情報の非対称性が存在する場合,企業買収が戦略的に望ましいかどうかについて分析を行った.買収企業と被買収企業どの間に利害の不一致が存在する状況を,プリンシパル・エージェンシー理論を用いて分析し,たとえ非対称情報取得のコストが掛かるとしても,合併が望ましく,競争緩和によるメリットが情報レントを上回ることを示した.この成果を"International M & A and Asymmetric Information on Market Demand"というタイトルの論文にまとめ,『国際公共政策研究』(第11巻第1号)に投稿・掲載予定とした. (2)標準的な寡占理論における合併の利益分析 標準的な寡占理論を再考し,あまり議論されていない一般的な多段階シュタッケルベルク数量競争のモデルを用いて,合併利益についての論文を執筆した.シュタッケルベルク均衡において,数量選択の意思決定タイミングが多段階で異なる状況で,同時手番と逐次手番の企業の合併利益とその相対的大小関係について調査を行った。この成果は,論文"Mergers under the Generalized Hierarchical Stackelberg Model"というタイトルの論文として,Niigata University Working Paper No.46にまとめた. (3)販売網の再編から見た情報取得の選択の分析 企業が製品を販売する際に,販売市場に関する情報を収集すべきかどうかについて,販売網再編の観点から分析を行った.情報取得に費用が掛かるにもかかわらず,寡占市場の下では過剰な情報収集競争が起こるとする結論を示し,"Observation of Common Retail Cost under Exclusive Dealing"というタイトルの論文にまとめ,Seoul Journal of Economics, Vol.18(1)に発表した. 2.M&Aの株式の取得過程に関する研究 ファイナンス手法の観点からのM&Aに関する企業戦略の解明と,株式取得のtakeover bidのオークション理論によるモデル化について,オークション理論を踏まえたtakeoverの理論モデルを構築したが,計画期間中に有益な結論を得るには至らなかった.
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