本研究課題、2ヵ年目の平成17年度は、研究計画にあるように、平成16年度に収集した労働市場の統計を男女別、学歴別、年齢階級別等の賃金構造、労働時間、就業構造等に関するデータベースを構築した。時系列データベースを利用して、男性と女性との就業率、失業率を説明できる回帰モデルの推計を行なった。男性と女性の就業行動に関するマクロ時系列モデルの定式化を試み、検討を進めた。1990年代以降の特徴として、非正規雇用者の増加に比べて、労働需要の不足が雇用環境の悪化をもたらした。この労働需給の不均衡が女性、若年層に大きなショックを与えたことをVARモデルからの結論として提示した。また、「雇用動向調査」を利用して、正規から非正規への雇用移動よりも、「労働力調査」から非労働力から非正規雇用への移動の方が多いことを示した。以上のような研究成果について、学術雑誌での審査中である。 また、データベースから得られた男女間の就業行動の相違について、研究成果をより広く社会に認識してもらえるように現在発表できるように準備を進めている。 政策目標として、男女共同参画社会の推進が掲げられており、また少子化が進行している中で、女性を取り巻く雇用環境について、本研究課題の目的にあげた男女別のデータベースの作成には社会的な意義があろう。今後は、このデータベースをより広く社会的に利用できるような環境を提供できるように取り組むことが課題である。具体的には、データベースを電子化して、ホームページで広くダウンロードできるように整備していく。また、2ヵ年の期間で必ずしも準備できなかった統計データ、地域や産業中分類という観点からのデータを補充していく必要がある。今後も、引き続いて研究内容の充実に努めて、雇用政策への提言に寄与していく。
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