研究概要 |
前々年度は、三重県紀伊長島町(現:紀北町)でのフィールドワークを通じて、農山村に居住する高齢者の生活実態、ならびに生活意識の把握を中心に調査を行った(結果の一部は「過疎地域の高齢者と他出子-三重県紀伊長島町の調査事例を通して-」『人文論叢』第22号,2005年に公表済み)。 前年度は、他出した子ども(「これから他出予定の子ども」も含む)、なかでも若・中年層、(他出の著しい)若年女性を対象として調査を行った(結果の一部は「男女共同参画をめぐる課題と展望」『人文論叢』第23号,2006年)、ならびに「若年無業者支援に関する実態調査報告書」2006年に公表済み)。 それらを受け本年度は、(1)三重県内の若年者を対象とした意識・実態調査(アンケート)、(2)三重県内の高齢者(55歳以上)を対象とした意識・実態調査(アンケート)、をそれぞれ実施し、その結果の一部を、報告書(「時代の変化に対応する三重県型地域雇用政策」2007年)に掲載するとともに、三重県内4カ所でセミナーを開催し(1/25(津市),2/16(伊勢市),2/20(四日市市),3/8(御浜町))、結果の一部を、広く一般向けに報告した。 これら調査の結果から、遠距離居住でありながらも、残留高齢者と他出子は、緊密な(親子)関係を維持していることを示す傾向がみられたが、近距離居住の多い三重県では、こうした親子関係の強い緊密性がケースによって親子関係を悪化させる要因となることも明らかとなった。また、地域による差も大きくあらわれ、とくに東紀州地域では、他出子が就職難をきっかけに、遠距離居住となる場合が多く、その際は、「身体的な介助は近隣や行政」「精神的なサポートは他出子」というような「使い分け」を行っている事例が数多くうかがえた。
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