今年度の研究実施計画では、インド・ウッタルプラデシュ(UP)州バラナシ市において義務教育学校の機関責任者と貧困層の親への聞き取り調査を行い、年度の後半に2年間の研究全体を取りまとめ学術論文として公開するとしていた。調査の実施時期が、現地との調整の結果、18年3月におくれたため、当初の計画通りに進まなかった部分も若干あったが、おおむね研究の目的は達せられた。 現地調査は、上記の時期に、ニューデリーのNational Council of Educational Research and Training(NCERT)の資料室における資料収集、バラナシ市の義務教育学校の校長への聞き取り、卒業生への聞き取り、という形で実施した。調査の目的は、バラナシ市内の公私立学校におけるドロップアウトと奨学金などの就学奨励プログラムの現況を明らかにすること、貧困層の子どもや親にとっての就学阻害要因を明らかにすること、であった。NCERTでは、UP州政府が実施しているドロップアウト対策や就学奨励プログラムの規模や受益者数についての資料を集め、バラナシ市では、学校長と子どもを対象にそれらの現場での実情について聞き取りを行った。政府によるドロップアウト対策の実情については、平成16年度にも既に確認していたことであるが、今年度の調査結果を含めていえば、公的な対策は予算や受益者数において相当の規模で行われていることが明らかになった。しかし、他方で、学校や受益者のレベルでの聞き取り結果からは、教育行政の効率性や透明性に大きな問題があるため、学校や子どもにそれらの対策が十分に届いていないことが明らかになった。上記の調査結果を含め2年間の研究成果は、平成18年3月に学術論文「途上国の貧困と教育」として公開した。
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