研究概要 |
青年期は自己の再構成が重要な課題であり,児童期までにいったん確立された自己の構造が大きく変化する時期であると言われている。そしてそのような自己の再構成の時期には,自己愛的な状態に陥りやすいことが指摘されている。このような自己愛的な人格を中心とした青年期の心理的特徴を探ることが本研究の目的である。 第1に,自己愛傾向と自尊感情が,集団での活動の自他評定に対してどのような影響を及ぼしているのかを検討した。実際に数名の集団活動を行う授業内で調査を実施し,一連の授業のほぼ終了時に調査を行った。調査では,集団活動の自己評価とメンバー相互の評価を求めた。結果から,自己愛傾向も自尊感情も,集団内においてうまく活動しているという自己評定に対しては正の影響を及ぼすのに対し,自己愛傾向の一部は他者からの否定的な評価に結びつく可能性があることを示した。 第2に,自己愛傾向の尺度に関する先行研究と,自己愛傾向の2成分モデルに至るまでの経緯をまとめた。そして,NEO-PI-Rによって測定されたBig Five Personalityとの関連を検討することにより,自己愛傾向の2成分モデルによって導かれる自己愛の2つの側面の特徴を明確化することを試みた。結果は以下のようなものであった。「自己愛総合」は神経症傾向と負の相関,外向性と正の相関,調和性と負の相関,誠実性と正の相関を示した。「注目-主張」は神経症傾向,外向性,調和性と正の相関,開放性と負の関連を示した。
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