研究概要 |
青年の親への態度・行動の発達的変化を検討することにより、心理的離乳モテルの検討を試みた。最初に、中学1年生〜大学4年生の1740名を対象に親への態度・行動(1親からのポジティブな影響尺度 2親との対立尺度 3親への服従尺度 4親との情愛的絆尺度 5一人の人間として親を認知する尺度)のデータを用いて、青年の性、親の性、学年によって、その態度・行動がどのように異なるのかということを尺度ごとに検討した。その結果、青年は父親に比べ、母親からより多くポジティブな影響を受け、情愛的な絆も強く、一人の人間として認知していた。その一方で母親への反抗は強いという結果となっていた。また父親、母親、それぞれ5尺度、計10尺度について主成分分析を行ったところ、2主成分(1親への親和成分と 2親への従属成分)が得られた。そして、この二つの主成分得点を学年別、青年の性別に算出し、親-青年関係の変化を検討した。さらに学校段階別に特徴的に見られる親-青年関係のタイプを手掛かりにして,心理的離乳への過程についてのモデルを提案した。すなわち、心理的離乳の道筋はいくつかの道筋があり、それらの過程は,A型(密着した関係)→B型(矛盾・葛藤的な関係)→C型(離反的な関係)→D型(対等な関係)の道筋を辿るタイプや,A型に回帰しその後D型に至るタイプなどがあるというものであった。 次に親子関係の発達とアイデンティティとの関連性を検討したところ、「アイデンティティの危機」と「親への反抗」と弱い正の関連性が認められた。また「アイデンティティの確立」と「1人の人間としての親」と「母親との情愛的絆」と弱い正の相関が認められた。 最後に、上記で得られたタイプ別に心理的・精神的に傷つけられることについての違いを検討したところ、B型とC型はA型とD型に比べて、親から心理的・精神的に傷つけられている傾向があるという結果が得られた。このことから、親から心理的・精神的に傷つけられているという認知が心理的離乳を阻害している可能性があるということが考察された。
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