研究概要 |
自己愛的な人格構造をもったタイプA行動パターン(以下,タイプA)のメンタルヘルス上の諸問題の検討した本研究であるが,本年度前半は主に昨年の成果の発表を行った.そして,後半では大学生を対象としタイプAの発現の規定をする自己愛に関連してモデルを構成する作業を行った. まず,前者であるが,タイプAと関係するメンタルヘルス上の問題に動機づけが介在することを実証したもので,これについては平成17年7月に開催されたStress and Anxiety Research Societyの大会において発表された. つぎに,後者については,旧来からタイプAを規定すると考えられていた信念(非合理な信念)をも取り入れた包括的なモデルを構成しその検討を行った.今回はこれまでの研究も踏まえ信念と自己愛とタイプAとの関係について4つのモデルを想定した.すなわち,自己愛パーソナリティが信念を規定しそれがさらにタイプAに影響する場合(モデル1),自己愛パーソナリティが信念およびタイプAの双方を規定し信念もまたタイプAを規定する場合(モデル2),信念および自己愛パーソナリティが独立してタイプAを規定する場合(モデル3),相互に影響しながらタイプAを規定する場合(モデル4)がそれらである.大学生を対象にして得られた調査データをこれらのモデルにあてはめ適合度を比較したところ,モデル2,および,4が比較的妥当性が高かった.以上の結果から,また,タイプAの規定因のなかで自己愛の影響は大きく,直接的に規定するばかりか旧来からタイプAの規定要因とされてきた信念と相互に影響しあいながらタイプAに関連していることなどが明らかになった. なお,本研究では,当初,タイプAが自己愛と関連しながらメンタルヘルス上の問題に影響している可能性なども想定されたが,それらについては今回は十分な解明には至らなかった.
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