研究概要 |
本研究は、「学校のアカウンタビリティ」について、教育委員会や学校管理職、教員がこれをどのように意識しながら教育活動を行っているのかについて分析することを目的としている。このような研究目的に基づき、当該年度は以下の通りに研究を進めた。 1.質的調査を通してのデータ収集 一昨年度、文献調査を通してアカウンタビリティを分析する際の視点を次のように5W1Hと設定した。即ち、Who holds(誰がアカウンタビリティを負うのか),to whom(誰に対して負うのか),for what(何に関して負うのか),What level(どのレベルのアカウンタビリティを負うのか),When(アカウンタビリティはいつ果たされるのか),how(どのようにしてアカウシタビリティを果たすのか)である。一昨年度及び昨年度にこれらの視点を用いて、実際に教育委員会職員や学校管理職、教員を対象にインタビュー調査及び関連活動の観察調査を行った。具体的には、3つの都道府県においてそれぞれ、教育委員会の高等学校関連政策担当職員1名、公立高等学校3校に関して、各校において校長、教務主任、教員2名の計4名、合計で1県につき13名、つまり合計で39名に対してインタビュー調査を実施した。併せて、インターネットや各教育委員会及び各校を訪問した際に関連する文書も収集した。そこでは、上述したhowを除く5Wの部分に関しては、教育委員会職員・学校管理職・教員ではそれぞれの活動内容が異なるため、それぞれ意識が向く方向性が微妙に異なることが明らかになった。教育委員会職員はより管轄内全体に、教員はより目の前の子どもあるいは保護者に対するアカウンタビリティを重視している傾向があった。また、アカウンタビリティという概念自体に対しては、「その中身はこれまで日本の教員はやっている」、「確かに無意識的にやっていたが、より体系的に活動できるようになった」といった相反する回答も寄せられた。また、全体として調査参加者は「教育におけるアカウンタビリティとは何か」を理論的に体系化できていたわけではなく、そのような状況でも教育委員会職員としては国の政策の流れ、現場としては教育委員会による政策の流れにより、学校評価や教員評価などに取り組まざるを得ない状況にあることがわかった。つまり、5Wと1Hの相互の関連作において、必ずしも意識的ではなかった。 2.国際的視野からの研究 昨年度、カナダにおける教育のアカウンタビリティついて、比較研究の見地から調査したが、今年度はそのアウトフットとして学力問題について学会発表を行った。また論文も執筆し、それは今夏刊行される予定である。
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