研究概要 |
研究の目的は,幼稚園児の関係構築を支える教師と幼児との相互影響関係について把握を試みることである。本研究では,先行研究をもとに幼稚園におけるフィールドワークによって系統的な調査資料の収集に努めた。研究の方法は,調査資料から幼児の遊びの創造過程における発話内容に着目し,(1)幼児と幼児,(2)幼児と教師,(3)幼児と教師と幼児,の観点から相互影響関係について分析を行った。 本研究は,3つのステージより研究の枠組みを構成し,課題への接近を試みた。第1ステージは,領域「人間関係」に関する研究動向の把握,第2ステージは,幼稚園児の遊びの創造場面における社会的スキルの修得過程の検証,第3ステージは,保育実践における実証的データ分析から,相互影響関係モデルの構築である。本年度は,2年の研究期間における2年目として,ステージ2およびステージ3の検討を行った。 ステージ2:幼児の遊びを支える社会的スキルは,幼児の自立と他者と協同する態度形成を支える教師の指導的要素と,自己充実から他者との共生という幼児の育ちの要素に大別された。分析結果から,(1)自立と協同,(2)自己充実から共生へ,といった4つの観点を把握し幼児の関係構築過程の視座を提示した。 ステージ3:幼児の創造的遊びを支える教師の指導の方向性として,(1)幼児と環境との出会い,(2)仲間関係の創造,(3)素材との関係の創造,の観点が析出された。幼児の遊びの創造過程において,(1)遊びの場づくり,(2)遊びの状況づくり,(3)遊びの情況づくりを基本視座とした3つの関係性の拡がりが把握された。幼児は教師の教育的意図により,環境との出会いやかかわる機会が保障され,幼児の遊びは,関係性の深まりに応じて遊びの質も向上し,幼児が主体的に遊びを創造することが可能となった。幼児が,教師や他児とのかかわりを通して遊びを創造する楽しさを知ることは,幼児の関係構築基盤を形成するうえで有用である。
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