研究概要 |
遠隔高等教育システムのメタ・アナリシスを実施するため,高等教育でe-learningの効果に関する評価を行った過去5年間の研究結果を収集した。なお,ここではe-learningに特化して「教授者と学習者が物理的に対面の形態をとらず,情報技術を媒介して行われる授業形式」と定義した。分析モデルとしては,教育効果を規定する要因として,設計要因,運用要因の2つを想定し,さらに設計要因には設備,教授者(支援体制を含む),学習者の3者を想定した。これら要因が,内容への興味,授業への参加度などの「態度」に影響を与え,さらに成績,講義の満足度などの「成果」に影響を与えるという3段階のモデルを形成した。具体的要因としては,次の要因をコード化して分析を行った。出版年度,実験設定(統制実験か事前事後実験か),学習レベル(授業か自習・補助教材か),学習形態(個人か集団か),コラボレーション(学習の内か外か),チューター(有無),映像(有無),フィードバック(教師との直接的なやりとりの有無),同時性(同期,非同期),授業内容,メディア利用の程度,動機付けのための工夫の程度,教授者と学習者との関わりの程度。 メタ・アナリシスの結果,e-learningに学習の成果があることが示された。そして,学習成果を被説明変数とする重回帰分析を行った結果,実験の設定が事前事後の設定であるほど,また自習・補助として使われているほど学習の効果が大きく,さらに学習形態が集団ではなく個人であること,そして教授者と学習者の関わりが強いことも学習効果を高めていることが明らかとなった。 また,遠隔授業及びe-learningの質保証に向けてのモデル構築を行った。質保証のためには,さまざまな側面を有するe-learningを無闇に扱うのではなく,既存の教育とどの側面が異なるのか,その特徴ごとに整理をしていく必要があることが示された。
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