研究概要 |
平成18年度は,カペリ恒等式の研究を,一般バーマ加群や関連する設定の下で行い,研究集会での発表も行った.18年度の研究計画の主眼は,A型とは限らない古典型リー代数,つまりB型,D型(直交リー代数)や,C型(斜交リー代数)に対してもにおけるカペリ恒等式,あるいはその類似物を導きたいということであった. カペリ恒等式とは不変微分作用素環におけるある種の恒等式であり,通常は,1次の掛け算作用素を成分にもつ行列の行列式と,1階の微分作用素を成分にもつ行列の行列式の積を,リー代数の作用で書き表すものである.本研究では17年度において,これを一般化したといえる,2階以上の微分作用素も行列式に現れるような設定の下,対称対のカペリ恒等式と呼ばれる恒等式を既に得ており,A型とは限らない古典型リー代数にも対応して対称対のカペリ恒等式は3種類得られた(投稿済み).18年度の研究の主要な成果は,この恒等式を詳しく解析し,全実部分多様体への制限との関係を見い出したことである.現在も研究の途上ではあるが,平成18年9月にストラスブール大学で開催された,Conference on Representation Theory and Prehomogeneous Vector Spacesなどで中間報告を行った. また,関連する研究として行っていた,split実現された直交リー代数の普遍包絡環における中心元の簡明な新しい構成についての論文が18年度に出版された.
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