研究概要 |
非線型波動及び分散型方程式の初期値問題と解の漸近挙動に関して研究した.主に非線型Schrodinger方程式の解の時間に関する漸近挙動について,非線型散乱理論の枠組みで研究した.特に,この方程式の解の漸近挙動について,時刻無限大に於いて非線型性の寄与が無視出来ない場合に興味がある.私が研究したのは,非線型項の寄与が無視出来るか否かの境目の場合で,具体的には空間次元がn=1又は2の場合に,1+2/n次式で表される非線型項(臨界冪)がそれに相当する.(解が小さい場合は,非線型項の冪が大きいと非線型項の時間減衰が速くなるので,短距離型に属し,非線型項の冪が小さいと非線型項の長距離型に属する.)例えば,空間2次元で2次の非線型項を持つ場合に,非線型項がu^2やu^^-^2の場合は非自明な漸近自由解が存在し得る事(短距離型に属し得る事)が知られているが(これは昨年度の私の研究成果の一つである),同じ2次の非線型項でも非線型項|u|^2の場合には(大雑把に言うと)非自明な漸近自由解が存在しない事(短距離型理論では取り扱えない事)を証明した. 又,瀬片純市氏との共同研究で,臨界冪の消散型非線型項を持つ4階Schrodinger型方程式の解の時刻無限大での漸近形を求めた.消散性のある非線型項の場合の漸近形は,消散性が無い場合に比べて,(logt)^<-1/2>だけ速く減衰する事が分かった. この他にも,空間2次元に於けるKlein-Gordon-Schrodinger方程式系の散乱理論や,Starkポテンシャルを持つ非線型Schrodinger方程式の散乱理論の構築(利根川聡氏との共同研究),電磁場ポテンシャル付きの非線型Schrodinger方程式の局所可解性と任意の空間次元に対する強解の平滑効果(中村能久氏との共同研究)についても研究し,成果が得られた.
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