研究概要 |
本研究は「不動点理論からの非線形問題の究明」と題し,不動点理論の考えを用い,非線形問題の解の存在および近似の問題を究明することを目的とする.具体的には,不動点および変分不等式の解をもとめる近似法の一つの体系を確立し,制約可能性問題,非線形最適化問題,非線形発展方程式の解の問題などの非線形問題をこの体系・不動点理論の立場から再構成し,非線形問題の解の近似法の体系を確立することを目指すものである.昨年度得た結果などをもとに,種々の近似法による不動点への収束定理に関する理論を非線形問題に応用する足掛かりを築くことを目標の1つとしてきた.これは昨年度から,上に述べた非線形問題を数学的に把握し,それらを数学的に再構成してみたところ,従来の不動点定理や近似法を発展させるとともに,新たな手法を開発して組み合わせることが必要であることがわかり,そこでまだあまり研究されていない,陰的近似法の研究に一番の力点をおいて研究してきた.制約可能性問題の解への近似法の研究では,凸計画法などのこれまでのアイデアを利用し,Mann型および陰的近似法による可算個の写像の共通不動点への強収束定理を一般のBanach空間のコンパクト凸集合上でw-mappingを用いることで得た.ここで得られた強収束定理は,可算個の制約式からなる凸計画問題などに応用されるはずである.非線形発展方程式の問題の研究では,Mann型および陰的近似法による可換な半群の共通不動点への弱収束定理および非線形エルゴード定理を空間の凸性,およびノルムの微分可能性を仮定しない,Opial条件をみたすBanach空間の弱コンパクト凸集合で得た.また,同じく非線形発展方程式の問題の研究に対して,陰的近似法により,増大作用素の0点への近似法の研究という形に帰着させ、陰的近似法による増大作用素の0点への強収束定理を一般のBanach空間のコンパクト凸集合上で得た.これらの結果は国内外の研究集会の際の意見・情報収集および多くの文献収集や多くの研究者との意見交換・打ち合わせなどが功をなしたといえる.国際会議などで発表して非常に関心をもたれたこともここに報告する.
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