研究概要 |
本年度はまず,昨年に引き続き主に点配置空間から定まる高次元の力学系について研究した.始めに神戸大学の津田照久氏と共同で配置空間が点の配置ではなく,簡単な部分多様体を配置した空間の場合について研究した.これは梶原・野海・山田によって提出されていた高階q-差分パンルヴェ方程式を一般化した力学系に対応している.その結果全てのA, D, E型ワイル群の対称性を持つ力学系を作ることができた.またτ関数を例外因子の軌道上の点の定義多項式として幾何学的意味を明らかにした.これらの結果について論文を投稿し,プレプリントarXiv : math.AG/0607661として発表した. 次に東京大学の井上玲氏と共同で,トロピカル幾何を用いて超離散周期戸田方程式を解く方法について研究した.その結果,超離散周期戸田方程式の状態空間から,トロピカルスペクトル曲線の上の因子類への写像を作る方法(固有ベクトル写像)を発見し,種数が3以下の場合に時間発展がヤコビ多様体上で線形化できることを明らかにした.種数が4以上の場合についても予想として定式化した.応用として周期箱玉系の初期値問題が解けることを指摘した.これらの結果について平成19年の4月に論文を投稿し,プレプリントarXiv:0704.2471として発表した. これらおよび昨年度までの研究についての発表および討論のため,平成18年9月にケンブリッジ大学で行われた研究集会「パンルヴェ方程式とモノドロミー問題:最近の発展」に参加した.また数理解析研究所研究集会「可積分系数理の眺望」についての研究代表者を務めた。
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