研究概要 |
本研究は反応・拡散・移流系の解が呈するパターンに関する研究である.反応・拡散・移流系のうちでも特に,1977年Deneubourgによって提案された社会性昆虫の巣の建設過程に関するモデル方程式系に着目した.このモデルは3因子系であるが,定常問題を考えると2因子系に帰着され,1993年,三村教授・辻川教授によって提案された三村・辻川系でよく近似されるため,本研究課題を遂行するにあたってはこちらの系を扱った. これまで三村・辻川系については,三村・辻川両教授と八木教授及び研究代表者の共同研究によって,2乗ルベーグ可積分な無限次元の関数空間をベースに解及び指数アトラクターが構成されているが,本研究ではその発展として,無限次元力学系の視点からパターン解の自由度を考察する目的で指数アトラクターの次元の評価を行った.この研究は,大阪大学・中口悦史氏及びドイツ・ミュンヘン工科大学・M.Efendiev氏との共同研究であり,中口氏と研究ディスカッションを行うため旅費を使用した.既に成果はまとめられており,論文投稿準備中である. 一方,三村・辻川系の解が呈する六角形パターンの解析については,前年度までの分岐理論を用いた解析と数値計算結果との間に関連性があることが分かったため,その成果を盛岡応用数学小研究集会(世話人飯田雅人氏)において発表した.この際旅費を使用した.この研究については,福岡工業大学・久藤衡介氏,千葉大学・櫻井建成氏,宮崎大学・辻川亨氏との共同研究であり,福岡において研究ディスカッションを行うため旅費を使用した. その他,前年度より引き続き行っている反応・拡散系におけるスパイラルパターンの大域制御項導入による安定化について,櫻井氏と共同で,系の近似常微分系を構成し,それを解析することで,一定の成果を得たため,非線形科学関連の学術雑誌にその成果を発表した.
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