研究概要 |
銀河団は、銀河団どうしの衝突・合体やより小さな銀河群を吸収しながら形成される。我々はこのようなプロセスを理解するために、N体+(電磁)流体シミュレーションを行っている。 今年度は特に1EO657-56銀河団について詳細に調べた。1EO658-56銀河団は有名な衝突銀河団のひとつであり様々な手段(X線、可視光、電波、重力レンズなど)で観測が行われている。X線および銀河の空間分布ではそれぞれで二つのピークが見られるが、その場所は一致していない。また、最近になって弱い重力レンズ効果によって質量分布も測定されたが、その結果は銀河の場合とほぼ一致している。以上のような質量分布(および銀河分布)とガス分布との食い違いは、ダークマターや銀河は無衝突系であるのに対し、ガスは衝突系でラム圧をを感じるために生じると定性的には解釈されている。その一方で過去の数値シミュレーションではこのような構造は報告されていない。今回我々はそのような特徴的な構造をN体+流体シミュレーションで初めて再現した。また簡単な解析的モデルを用いて、そのような構造が出現する条件を議論した。以上の結果はPASJ,58,925として発表された。 また銀河団内での磁場構造の進化を追うために、N体+電磁流体のコード開発を行った。電磁流体部分にはRoe法に似たリーマン解法を基にしたTVD法を、N体部分にはParticle-Mesh法を、そして自己重力の計算にはFFTを用いている。すでに国立天文台のVPP5000上でベクトル化および並列化をすませており、予備的な計算を開始している。
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