研究概要 |
本研究では、太陽コロナ中の小輝点(XBP)の動きから太陽微分回転則を精度よく求め、XBPと下層の光球磁場とのつながりを理解しようとしている。「ようこう」X線画像データからXBPを抽出し、主に観測されるXBP数の多い太陽活動極小期近くの4年間のデータを統計的処理したところ以下の結果が得られた。(1)経度方向の速度が一定になるような制約を課してXBPの高さのスケールを求めると10,000±2,000kmと評価されること、(2)XBPの動きよりコロナの微分回転速度を〜1m/sの統計精度で求めることに成功したこと、(3)XBPより求まった微分回転速度は光球磁場変化から評価されたものと同じ微分回転則となっており、大規模コロナ構造から求められる緯度方向に剛体的な回転とは異なること、(4)赤道での回転速度について調べたところ、寿命が短命なXBPは回転速度が小さく評価され、1日をこえる長寿命のものはある一定値に収束すること、(5)太陽極小期に近い4年間についてみると、赤道部で1年あたり約3m/sの速度減少が見出されること、また30-40度の中緯度ではいったん減速した後に加速していること。(2)については研究実施前の予想通りである。(3)の結果はXBPが異極の光球磁場の衝突領域に発生することによるものだろう。(4)はXBPとして観測されるものに2種類の起源があるのではないかと思わせる。日震学より得られる内部回転速度と比較すると、短命なXBPから求められた速度と一致する深さはごく表層の限られた場所だけであり、XBPに関与する磁場の生成場所が表層に限定されているからではないだろうか。(5)については、光球速度場や日震学的手法で見出された微分回転則からのずれ分であるtorsional oscillationが、コロナの構造であるXBPから求められたという結果である。
|