研究概要 |
本研究では、 J-PARCの高運動量K中間子ビームラインにおける、(K^-,K^+)反応分光実験に用いるための大立体角かつ高分解能な常伝導スペクトロメータを開発することを目的としていた。具体的には、特別推進研究「電磁プローブによるΛハイパー核の研究」(平成12-15年、代表者橋本治教授)において作成した常伝導スペクトロメータHKS(立体角30msr,分解能2x10^<-4>)の設計を基に、立体角50msr,分解能1x10^<-3>を得るための設計を行うとともに、ターゲット直後の、高レートに耐える検出器のプロトタイプの設計製作を行った。 前者では、申請当初にあった既存の二重極磁石の流用の可能性が無くなったため全てを新しく製作することとし、系の構成はHKSと同様に四重極-四重極-二重極(QQD)磁石とすることに決定した。この際、山形大学の加藤清吾教授の協力を得て、立体角を決める上で最も重要な役割を果たす、ターゲット直後の四重極磁石を、通常の形ではなく、入り口側で口径が小さく、出口側では大きくなっている、という特殊な形をとることにより、超伝導磁石を用いたスペクトロメータで得られている100msrに近い立体角を得ることのできるスペクトロメータ系を開発することができた。 一方後者の、高レートに耐える検出器のプロトタイプについては、当初目的としていた分解能などを得ることは出来ないものではあるが、予想される高レート(〜数十MHz)に耐えうるものとして、シンチレーションファイバーとマルチアノード型の光電子増倍管を組み合わせることで、分解能1.4mmで、20mmの有効幅を持った位置検出器を作成し、 KEKのT1ビームラインにて動作確認を行った。高いレートでの動作を試すことはできなかったが、π^+, K^+, pの各粒子に対するデータをとり、設計通りの動作をしていることを確認した。
|