研究概要 |
高エネルギー反応で生成する重たいクォーク(c、b)は、原子核原子核衝突においては、QCDプラズマ生成に関する情報を担う探針として重要である.また、高エネルギー反応に関与するハドロンあるいは原子核の波動関数成分は、Bjorkenのxが小さい部分として特徴付けられ、ハドロンの種類によらない普遍的な性質を持つと予想されている,十分な高エネルギーでは、重いクォーク生成を通してもsmall-x成分を探ることができ、質量の小さなハドロンの生成を通した研究と相補的な重要性を持っている. 近年、small-x成分を支配するくりこみ群方程式が提出されているが、本研究ではMcLerran-Venugopalanの有効模型を初期条件に選び、large N(Nはカラーの数)近似のくりこみ群方程式を数値的に解くことによって、small-xにおける原子核波動関数を構成した.それを用いて、クォーク対生成断面積の表式に現れる多点相関関数を評価し、高エネルギー陽子原子核衝突における重いクォーク生成断面積を数値的に得た.これにより主に以下のことが明らかになった; ・重心エネルギー200GeVの重陽子-原子核衝突RHIC実験で得られているcクォーク生成断面積に、small-x成分は重要な寄与をしない. ・重心エネルギー8500GeVでの陽子-原子核衝突を計画しているLHC実験では、small-xの寄与が非常に重要になり、実験解析からsmall-xの原子核波動関数に関する情報が得られることが期待される.特にくりこみ群で記述される量子効果が顕著に現れる.
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