研究概要 |
III-V族希薄磁性半導体はスピントロニクス分野において基礎、応用の両観点から、盛んに研究がなされている,、なかでも(Ga, Mn)Asは、最高150Kという比較的高温の強磁性転移温度や、既存の半導体素子との整合性などから、特に注目されている。III-V族希薄磁性半導体の強磁性発現機構は、正孔とMnスピンの相互作用が関与していることはわかっている。しかしながら、いまだ完全な理解が得られていないのが現状である。 本研究では、磁化誘起第二高調波発生をブロープとして(Ga, Mn)AsのMnスピンダイナミクスを観測する方法(時間分解非線形磁気光学カー効果)を確立した。笛一二高調波をプローブとしてもちいると、励起光によって注入されるスピン偏極キャリアによる影響を受けずに、Mnスピンダイナミクスを観察できることがわかった。さらに、(Ga, Mn)AsのMnスピンは励起光パルスの時間幅である200 fs以内の時間でスピン偏極した光キャリアと相互作用していることを見出した。 そこで本年度は、200fs以内の時間応答を観測するために、時間幅20fsの超短パルスレーザーを用いた時間分解測定系の立ち上げを行った。まず初めに、時間分解ポンプープローブ測定系を作製した。この作製した測定系の性能評価のためにバルクのGaAsの時間分解反射率測定を行い、20fsの時間分解能で反射率変化測定が行えることを確認した。また、20fsパルスレーザーを用いた時間分解カー回転測定系の作製も行った。この測定系もバルクGaAsを用いて性能評価を行い、20fsの時間分解能でカー回転測定が行えることを確認した。 次に、20fsの超短パルスレーザーを用いた磁化誘起第二高調波発生をプローブとしたスピンダイナミクス測定を行うために、このレーザーを用いて磁化誘起第二高調波発生の観測を行った。非常に微弱ながらも磁化誘起第二高調波光の観測を行うことが出来た。しかしながら、磁化誘起第二高調波発生をプローブとして用いるには、ポンプ光に対する強度が強すぎるために、ポンブープローブ測定を行うことが出来なかった。今後は、第二高調波光の検出感度を上げることにより、ポンプープローブ測定が行えるように、測定系を改善する予定である。
|