研究課題/領域番号 |
16740182
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物性Ⅱ
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中西 良樹 岩手大学, 工学研究科, 助手 (70322964)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2005年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2004年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 静水圧力 / 一軸圧力 / スクッテルダイト化合物 / 層状Mn酸化物 / 四重極モーメント / 多重極転移 / 超音波 / 弾性定数 / 一軸性圧力 / 結晶場基底状態 / 交換相互作用 |
研究概要 |
本研究により静水圧力下における超音波を用いた物質の弾性定数、超音波吸収の測定、および圧力下における磁化測定を可能にした。また前者については一軸圧力下での測定も可能にした。静水圧力下における研究は強相関物質SmRu_4P_<12>について行った。この物質は16K付近で金属絶縁体転移を生じ、同時に八重極転移を示す可能性がある物質でありミクロスコピックにはmSRの実験で我々の提唱した八重極転移を強く示唆する結果が得られている。圧力を印加するとゼロ圧では目立たなかった転移温度に向かう弾性定数の軟化が圧力増加に伴い顕著になり、この弾性定数のソフト化を解析することによってSmイオンの4f電子に起因する電気四重極モーメント間の相互作用および超音波により誘起される格子歪みと四重極モーメントとの結合定数が圧力増加に伴って増大することが分かった。これは八重極モーメントを構成する四重極モーメントが圧力により副秩序変数から主秩序変数に移り変わる可能性を示唆するものである。これまでに八重極秩序がはっきりと観測された例はないが、いくつかの候補物質が報告されている。NpO_2、Ce_<1-x>La_xB_6のIV相が八重極秩序ではないかと言われている。これまでにも八重極モーメントにより誘起される微弱な磁気モーメントを核磁気共鳴あるいは共鳴X線等で間接的に探る手法が一連の多重極秩序の研究に用いられてきたが本研究により副秩序として四重極モーメントを用いる手法を圧力下における超音波の測定により確立したと言える。一軸圧力下については本研究期間中には良質なデータが得られなかったが今後は静水圧力下と同様の実験を行い副秩序として四重極モーメントをさらに空間対称性によって分類し、より詳細な議論を多重極秩序に関して展開する予定である。 あわせて、静水圧力下において層状Mn酸化物(Pr_<0.6>La_<0.4>)_<1.2>Sr_<1.8>Mn_2O_7の磁化測定を可能にした。この物質は40K付近で常磁性-強磁性転移を生じ、同時に絶縁体から金属に転移する興味深い物質である。磁化の温度変化を測定することによりこの転移が圧力により顕著に増大することを発見し転移に伴う磁気履歴が圧力増加に伴い徐々に減少していくことを見いだした。温度磁場相図を作成し強磁性相が圧力により安定することが分かった。これは準安定的な強磁性クラスター相が圧力により増加し結果として結晶全体にわたる一様な強磁性相を導く過程を観測しているものと考えられる。今後は圧力下での層状Mn酸化物の超音波測定を行い、両者を比較することにより格子歪みと磁気モーメントとの結合を見積もり金属絶縁体転移に格子系がどのように寄与しているのかを明らかにしていく。
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