研究概要 |
緩和法による圧力比熱測定は、圧力媒体中の試料を直接加熱した時の温度変化を試料の複数の点で測定し、その結果を3次元の熱伝達を数値解析的にシミュレートした結果と比較することによって、試料,圧力媒体の比熱,熱伝導率を求める新しい手法である。 本年度は、まず昨年に引き続いて本測定法の精度の向上に努めた。具体的には、ヒーターおよび試料を整形する際の精度を高める事、シミュレーションに使用する解析モデルの改良とパラメータ決定手法の最適化を行った。この手法を重い電子系超伝導体CeRh_2Si_2に適用し、13〜40Kの温度範囲,0〜9GPaの圧力範囲で測定を行なうことにより比熱と熱伝導率の圧力依存性の観測に成功した。反強磁性転移における比熱異常の圧力変化を詳細に観測した結果、転移点の圧力依存性が既知の電気抵抗率によって得られた圧力相図と一致することを示す事ができた。また、絶対値に関しても誤差を安定して10%以下に抑えることに成功した。さらに絶対値の精度を上げる為に、ノイズの低減と温度測定の応答性を高める事,熱伝導率の小さい圧力媒体の探索に努めている。これらの研究で培った技術を応用して熱電能の測定も試行した。低温領域で圧力下での絶対熱起電力の標準物質が無いため、重い電子系化合物の熱電能測定では相対変化を観測するに留まっているが、熱電能の大きなBiTe系熱電材料で試行した結果では正しく圧力依存性を評価する事に成功した。重い電子系超伝導体への新たな展開としては、極最近1〜2GPaの高圧下で超伝導を示す事が発見されたCeRhSi_3とその関連物質CeIrSi_3,CeRhGe_3,CeIrGe_3の試料を作成し、基本的な物性の圧力依存性を調べる研究に着手している。
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