研究概要 |
昨年に引き続き、我々が発見した硫化スピネルCuRh_2S_4の圧力誘起超伝導体絶縁体(S-I)転移の発現機構の解明をめざし研究を行った。これと並行し,CuRh_2S_4単結晶育成も開始した. (i)圧力下磁化測定 圧力誘起S-I転移の特徴を磁気的側面から調べるため,圧力下における磁気測定を行った.圧力が増加すると,超伝導転移T_Cや熱力学的臨界磁場H_C,上部臨界磁場H_<C2>,磁場進入長λ,ギンツブルグ-ランダウ(GL)パラメータκが上昇すること,下部臨界磁場H_<C1>が変化しないこと,GLのコヒーレンスの長さξ_<GL>が減少することがわかった.これらをまとめ低温国際会議LT24(米国フロリダ)で発表した。 (ii)単結晶育成に向けて S-I転移の起源を解明するためには,良質な単結晶試料を用いて研究することが重要である.しかCuRh_2S_4単結晶の育成に成功したという報告は無い.我々はBiフラックス法による単結晶育成を試みた.単結晶育成のためには石英管に封入するCuRh_2S_4とBiのモル比,溶融させる温度,昇温・除冷速度等の数多くの育成条件を決定しなければならない.これまでのところCuRh_2S_4単結晶試料は得られなかったものの,CuRh_2S_4がBi溶液に溶融することがわかった.このことは,CuRh_2S_4単結晶育成にあたって,Biフラックス法が有効な手段となりうる事を意味する.単結晶育成の成功に向けて,大きな手応えを得た. (iii)リエントラントスピングラス物質 CuRh_2S_4と同じ結晶構造をもつ硫化スピネル物質群の物性を系統的に調べる目的でCuCrZrS_4の比熱,磁気測定を行った.この物質は温度減少にしたがって強磁性相からスピングラス相へ変化する,リエントラントスピングラスを示すことが知られていた.磁気測定から,T_C=56Kで強磁性的な振る舞いを示すものの,ひねつ測定からは長距離秩序を示すような異常は見られなかった. これをまとめ,国際ワークショップ(広島)と日本物理学会(愛媛大学)で発表した.
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